2018.11.28 なぜ「空室率」が目立つのか?不動産投資市場の「スポンジ化」の現状
スポンジ化とは、簡単にいうと「空き家が増える」ということです。どういうことかというと、国土と人口を考えると分かりやすいです。
当然ですが、日本の国土は変わりません。しかし、日本では人口が減少するため、「使われない空間(賃貸物件など)」が多くなり、それが小さな穴が空くように見えることの比喩で「スポンジ化」といわれています。
不動産投資家にとって最も重要であり気になるポイントは、「儲かる物件選びができるかどうか」です。その「儲かる」ためのキーワードは空き家にならないことなので、スポンジ化が進むにつれて儲かる物件はどんどん減っていきます。
都市内でも、空き物件、放置率がランダムに多数発生し、都市の密度が低下しています。そのため、都市でも空いている空間が増え、スポンジ化は加速しているというわけです。
さて、そんなスポンジ化ですが、実際の不動産投資の今後を占う上では、その展望が気になるところです。展望に関しては、以下のように2つの時期別な要因に留意しましょう。
そもそも、現在の不動産投資市場は悪くありません。物件価格は高水準をキープしており、賃料や空室状況も悪くない推移になっています。その大きな要因となっているのはインバウンド需要による活況であり、それは2020年のオリンピック後に失速する可能性があります。
日本に限らず、オリンピックの誘致が決まると、インバウンド需要を取り込むチャンスなので、国を上げて訪日観光客を呼び込む施策を講じます。たとえば、民泊事業の新法成立などもその一環です。
言い換えると、訪日観光客はオリンピックを契機に減少する可能性があり、日本に落ちるお金が減る可能性があるということです。そうなると日本経済にとってネガティブに働き、不動産市場でスポンジ化が進む原因になります。
また、そうなることで日本に魅力を感じて日本で不動産投資をしていた外国人投資家が、一気に物件を引きあげる(売却する)可能性があるのです。つまり、日本の不動産投資市場は供給過多の状態になり、スポンジ化が進み一気に値崩れするリスクを孕んでいます。
このように、オリンピックによって注目度が上がった日本は、オリンピック終了を契機に海外マネーの引き上げリスクがあるということです。
日本には、古くから「生産緑地」というものが存在しています。みなさんも、街中で生産緑地と看板の立ててある場所を目にしたことはあるでしょう。そもそも生産緑地とは、そのエリアを市街化したいものの、古くからの農家もいるので、その人達に配慮し緑地を残す施策のこと。
そして、社会的に「緑を減らさないで欲しい」という要望が強いことが背景にあり、緑を守るためにも生産緑地は存在します。しかし、2022年にそれらの指定が解除される予定であり、それに伴い生産緑地が住宅用地になると言われています。
立地の良い場所に生産緑地があるケースも多いので、住宅地としても十分採算が見込めるのです。つまり、生産緑地が解除される2022年には、投資用物件が増える可能性があり、増々スポンジ化が加速するリスクが潜んでいるというわけです。
ご存知の通り日本は人口減の一途を辿っています。それだけでもスポンジ化リスクがあるので、今後は2020年、2022年など目安になる時期があるわけではありませんが、全く儲からない・誰も取得しない、いわゆる「0円物件」が増えてくる可能性もあるのです。
つまり、不動産を投げ売りする層が出てくる可能性があり、そうなると不動産価値は増々落ちます。スポンジ化による既存物件の収益低下以外にも、物件の資産価値が下落するというリスクもあるということです。
「日本の不動投資市場のスポンジ化」と聞くと、マクロな経済情勢に思われがちですが、実はミクロの世界で個人の不動産投資家にも深くかかわってきます。大事なのは、不動産市場の情報を集め、動向をつかんでおくことです。
スポンジ化現象が起こるとはいえ、当然上手く運営できている物件は数多く存在するはずです。その物件の1つになれるよう、情報収集を怠らず常にアンテナを高く張っておきましょう。